研究概要 |
本研究では, 環境感応型発光性金属錯体を基盤にして, 光により誘起された配位構造の変化が連鎖的もしくは協奏的に集積構造の変化に波及してクロミズム現象として現れる, 全く新しいタイプのフォトクロミックシステムの構築をめざしている。今年度は光による構造変換を誘起するために, ジメチルスルホキシド(dmso)、ニトロシル(NO)、チオシアン酸イオン(NCS^-)などの両座配位子を用いて新規系の探索を行った。 1. フォトクロミックな発光変化を示すハロゲン架橋銅(I)複核錯体. 銅(I)多核錯体はしばしば強発光性を示すため、近年、安価で高効率な発光材料として注目を集めている。今回、dmsoが配位した銅(I)複核錯体、[Cu2(μ-1) 2(dmso) 2(PPh3)2]の結晶の単離に成功し、構造を明らかにした。この錯体は強発光性を示すが、350nmの光を照射すると、発光色が青色から緑色に変化し、逆に、照射後の錯体をdmso雰囲気下で加熱すると元の青色に戻ることが見出された。この"光で発光色が変化する"ユニークなフォトクロミック挙動は、光励起によるdmso分子の動きに誘起された構造変化に基づくものと考えられる。 2. 光誘起結合異性化を示す白金(II)錯体の構築とフォトクロミズムの発現. ニトロシル錯体は光に鋭敏に反応して結合異性化が起こることが知られているが, 異性化状態 (M-ON) は一般に低温では安定であるものの室温ではもとの(M-NO)に容易に戻ってしまう。異性化状態も室温でも2つの異性体がともに比較的安定で, 異性化に伴って著しい色変化が起こるニトロシル白金錯体を構築する。今回、 [PtBr (NH3) 4 (NO) ] (PF6) 2を合成し、フォトクロミック挙動を調べた。その結果、対応するCl錯体より光異性化状態が安定になることが見出された。
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