研究概要 |
フォトクロミック分子と金属錯体を融合した系、「フォトクロミック錯体」では、両分子ユニットの電子的および立体的相互作用による新現象が期待される。新規フォトクロミック錯体の多重機能の発現に関して、下記の研究成果を得た。 電子ドナーであるフェロセンおよびトリエチルアミン部位2個を結合したジエチニルエテン類を合成し、そのCTバンドの可視光励起による光異性化、並びにドナー部位間の電子相互作用の大きさを光スイッチングできることを明らかにした。またトリエチルアミン系においては、蛍光の光スイッチングも発現した。レドックス核間電子相互作用の大きさを光スイッチングする系として、HOMOレベルが光異性化により大きくシフトするジメチルジヒドロピレン(DHP)にフェロセン部位2個を結合したFc_2BzDHPを合成した。この錯体は、上記の目的を達成する以外に、フェロセン部位のみの酸化によるBzCPD→BzDHPめ新規な間接的閉環反応を起こすことを見出した。アゾベンゼンの可逆なtrans-cis光異性化を利用した磁性変換を目指し、固体・溶液両状態でSCOを示すピリジルベンズイミダゾールにアゾベンゼンに導入した配位子、trans-5azopybim(2)、およびその鉄(II)錯体、[Fe(2)_3](BF_4)_2・3H_2Oを合成した。室温における光異性化に伴う磁化率変化をEvans法にて調べたところ、磁化率は365nmの照射により増加、続く436nmの照射により減少し、繰り返し応答が観測され、可逆的な光誘起磁性変換が可能となることを明らかにした。 アゾベンゼンを持つジチオラト配位子とアゾベンゼンを持つビピリジン配位子を結合したPt(II)錯体において、光応答波長が紫外-可視光全域まで拡がることならびに、異なる3波長の光で、2個のアゾベンゼン部位のtrans-trans, trans-cis, cis-transの三重安定状態を相互に可逆に変換できることを明らかにした。
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