研究課題
特定領域研究
フラーレン系分子とピセンを対象として、バルク、薄膜ならびにナノメータスケールでの構造と物性に関する研究を進めた。ナノメータスケールでの構造に関する研究としては、C60ならびにC70分子をシリコン基板上に配列させて、STMで観察しながらSTM探針を近づけて局所電界を印加し、配列構造を破壊する研究を進めた。次に、薄膜スケールでは、C60ならびにピセンを活性層とする電界効果トランジスタを作製した。とくに、電極を導電性高分子とするトランジスタデバイスを作製し、将来的なフレキシブルデバイスに向けた基礎的な研究を行った。ピセンFETは、酸素を暴露すると著しく移動度とオン電流が上昇する。このデバイスを酸素センサとして利用するためには、低電圧駆動を実現しなければならない。我々は、従来用いてきた400nmの膜厚を有するSiO2絶縁膜を40nmまで薄くするとともに、表面をフッ素系材料でコーティングして、ゲート電流を低下させて、ピセンFETの安定な低電圧駆動を達成した。また、パリレンと呼ばれる高分子膜を誘電絶縁膜としてピセンFETを作製し、絶縁膜表面での水の存在下で起こる「バイアスストレスによるトラップ準位の増大に伴う伝達特性でのヒステリシスの出現」を完全に抑えることに成功した。これによって、連続印加電圧によってピセンFETのオン電流が時間とともに減衰する現象をなくすことに成功した。ピセンFETに関連しては、水素暴露によるオン電流の減少効果なども見いだしている。ピセンのバルク結晶中にアルカリ金属原子を挿入して、20Kという有機物としては、著しく高い超伝導転移温度を有する物質を作製した。これは、ピセンの擬二次元的構造への金属挿入に基づいており、「ナノ空隙を金属原子で埋める化学」と言うことができる。この結果は、「有機物の超伝導の歴史に新たな一歩を記すもの」として、Natureにおいて公表された。また、各種の科学雑誌(Scientific Americanなど)で紹介された。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (6件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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http://interfa.rlss.okayama-u.ac.jp/