研究概要 |
隣接スピン間スピン間で磁気相互作用が競合する幾何学的スピンフラストレーション系においては、スピンの量子揺らぎの効果が大きくなり、スピン液体状態が実現するとされている。スピンの固体状態とも言うべき磁気秩序状態とは全く異なる非秩序状態の実現は、新しいスピン状態としての学術的な興味と、新しい磁気スイッチングデバイスとしての応用への期待がもたれている。スピンの量子揺らぎは、スピン量子数が小さい程、スピン-軌道相互作用が小さいほど大きくなる。本研究においては、C,H,N,Oといった軽元素のみから構成される有機ラジカル磁性体を用いて、S=1/2三角格子反強磁性体の構築および低温物性研究を行うものである。申請者は、独自の有機ポリラジカルアプローチにより、一連の正三角形および二等辺三角形磁性体の合成に最近成功した。本研究ではこのTNN系化合物の極低温領域における静磁化率、磁化測定、電子スピン共鳴実験を行い、基底状態におけるスピン状態の解明を日指す。 (1) ニトロニルニトロキシドおよびイミノニトロキシドを含む三角スピン系物質4種類について、溶液の静磁化率および磁化測定を行い、分子内磁気相互作用を見積もった。 (2) これら4種類の結晶の0.5Kまでの磁化率測定から、分子間磁気相互作用について考察した。 (3) 結晶構造制御を目指し、トリラジカルのカチオン化を試みた。
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