研究概要 |
化学スパッタリングにより発生した炭化水素分子から解離して生成されたCDおよびC_2分子からの発光強度分布を計算機シミュレーションにより求めて,それらを実験結果と比較する.発光強度分布を用いる利点は,プラズマ-壁相互作用をリアルタイムに評価できることにある。これによりスパッタリング収率、炭化水素および炭素の再堆積過程、炭化水系不純物の輸送過程を解明することを目的とする。本年度は以下の事項を行った。(1)香川高等専門学校詫間キャンパスに,新たに購入した計算機3台を設置して計算環境の増強を行った.(2)計算コードに対してOpenMPを用いた並列化を施して,計算時間の短縮を行った.これにより計算において効率よくパラメータースキャンを行うことが可能と成った,(3)JT-60Uで測定された発光強度分布をフィッティングにより再構築することで,化学スパッタリング収率を見積もった.見積もられた値は既存の実験結果よりも1オーダー程度低いものとなった.これについては,今後も検討を重ねて行く.(4)トカマク装置での周辺プラズマ領域をモデル化した状態で,ダイバーター板から発生した炭化水素分子のD/XB値の計算を行った.考慮された炭化水素分子は,エタン系(CH_4),メタン系(C_2H_6,C_2H_4,C_2H_2)及びプロパン系(C_3H_4,C_3H_6,C_3H_8)である.得られた計算結果と実験結果とを比較して,エタン系において,両者の間に良い一致を得た.加えて,メタン系においても定性的に良い一致を得た.プロパン系においては,実験データーが存在しないので,比較は出来なかったが,プラズマ温度に対するD/XB値の依存性を初めて示すことが出来た.また,プラズマ密度の減少によりD/XB値が増加することを確認し,ダイバーター板で反射した粒子からの発光により発光回数が増えたことに起因することを示した.
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