研究概要 |
・光増感型複合π電子系有機ナノ結晶の光物理化学過程と光物性の解明 異なるπ電子系有機分子を光励起エネルギーのドナー(D)とアクセプター(A)として複合化した光増感型複合有機ナノ結晶を新たな分子ナノ集合系として生成し,そのDおよびA蛍光強度のDA混合比依存性(A/D=10^<-6>~10^<-1>)を定量的に評価した。複合ナノ結晶におけるDA間およびAA間のForster半径を見積もり,Forster励起エネルギー移動(FRET)効率のA/D値依存性を与えるモデルをForster理論に基づいて独自に構築した。さらにそれらをForster理論に基づいて構築したモデルによって解析し,DA,AA間のFRET効率のDA混合比依存性を明らかにした。これにより蛍光強度比のA/D値依存性を1つのパラメーターのみで非常に良く再現することに成功した。その結果,この系では光合成系のような2桁以上におよび光吸収断面積の増大効果によってA分子の励起状態を限られたナノ空間に高密度に生成させることができ,それを利用することでAA間の励起子対消滅効率を制御できることを明らかにした。この結果から,光増感型複合有機ナノ結晶が高効率な単一光子発生源として振る舞う可能性を示唆された。 ・単一分子ナノ集合体の光子相互相関測定法の開発 昨年度,独自に開発したレーザー走査顕微蛍光分光装置に,新たにHanbury-Brown-Twiss型光子相互相関計測システムを導入した。この装置では無偏光ビームスプリッターで1:1に分割した信号光子を2つの単一光子検出器でそれぞれ検出し,光子到達時間間隔のヒストグラムを時間相関単一光子計数法によって測定する。現在までに,連続光を励起光源とした光子相互相関測定に成功し,単一π電子系分子ナノ集合体の光子アンチバンチング挙動を調べることが可能となった。
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