研究概要 |
巨大超分子の構造解析を行うためには,ソフトウエアの点からも,様々な新技術の開発が必要不可欠である.新技術を最も必要とするプロセスの1つとして構造の精密化がある.通常,精密化する際のマニュアルフィッティングは人の熟練度にかなり依存し,時間もかかる.分子量数万Da(100-1000残基)の蛋白質の精密化でさえも数週間から数ヶ月かかり,分子量数十万から数百万の超分子構造の精密化では,さらに数十倍の時間と労力が必要になる.分子量1億Daの超分子構造の精密化では,数百万残基を取り扱うことになり,マニュアルによるフィッティングはもはや不可能である.そこで,我々は巨大超分子の自動精密化ソフトsuper_LAFIREを開発した. 昨年度に,super_LAFIREを用いて,本特定領域の班員の巨大分子Vaultの構造解析に協力し,実際に巨大分子の精密化をしながら,3.5A以下の低分解能での巨大分子Vaultの精密化方法の検討を行い,分子量が1千万Daを超える巨大分子の精密な結晶構造解析に成功した. Vaultは分子量が100MDaを超え,得られた結晶の非対称単位中に861残基の分子が39個,合計32955残基存在する.これまで,vaultのような巨大分子の精密化を通常のようにマニュアルフィッティングしながら行うのはほぼ不可能であった.そこで,super_LAFIREを用いて,最終的に,1分子につき812残基まで構築し,Rfree/R因子が33%/31%まで半自動的に精密化することができた.本年度は,そのVaultの自動精密化の過程に実感した問題,モデル修正の効率,特に分子置換法により得られた構造(断片的に)のずれが大きい,あるいは分解能が低い場合のフィッティングの効率について,構造解析の実例を用いて改善を行った.さらに,使いやすくするために,LAFIREのグラフィックスユーザインタフェースも開発し,Linuxバージョンだけではなく,Windows, Macintosh用のLAFIREも作成した.
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