研究概要 |
CD4陽性T細胞であるヘルパーT (Th)細胞は,産生するサイトカインの種類により,1型(Th1)と2型(Th2)に分類される.Th1細胞は細胞性免疫を司り,ウイルスなどの細胞内寄生病原体の排除などに関与する.一方,Th2細胞は,抗体産生などに関与して液性免疫をコントロールする.Chen等は新しいサイトカイン受容体(WSX-1)を発見し,WSX-1がTh1細胞分化誘導に関わることを発見した.さらに,IL-27が,WSX-1のリガンドであることが同定された.IL-27はp28とEBI3から構成されるヘテロ二量体を形成したサイトカインである.IL-27受容体は,WSX-1とGP130から構成されている.IL-27, WSX-1, IL-27/WSX-1複合体およびIL-27/WSX-1/Gp130複合体の構造解析を行い,これらの蛋白質の認識機構を解明し,さらにIL-27のシグナル伝達機構を構造生物学的に解明することが,本研究の目的である. 本件度は,IL-27のHEK293S細胞を用いた発現系の構築を行った.現在,IL-27の精製を行っているところである.特異的受容体であうWSX-1については,大腸菌を用いた発現系を構築した.大量培養を行った後,精製法を確立した.現在,結晶化条件のスクリーニングを行っている.また,IL-27のファミリーに属するIL-23の糖修飾型の結晶化を行い,2.6A分解能までのデータを収集した.この結晶の空間群はP61で,格子定数はa=b=108.925A, c=83.329Aであった.構造既知の糖鎖を切除したIL-23の構造を用いて分子置換法により構造解析した後,R値が19.50%まで精密化を行った.現在,糖鎖の有無による構造の差異を詳細に検討しているところである.
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