研究概要 |
細いフィラメントの原子モデルの精密化を行った。これらの研究を行うための変異型アクチンのタンパク質は野口らによって開発されたシステム、即ち、アクチンのC端にヒスタグを付け精製し、その後、このタグを切除する方法で、ディクチオ型粘菌で大量発現し精製した。これらの構造データを統合するには,これまで目視によるドッキングが行ってきたが,精密化・客観化を目指して,分子動力学を用いて精密化した。しかし、蛍光共鳴エネルギー移動法(FRET)から得られる距離情報からイテラティブに蛍光団の三次元的位置を求めることができる距離幾何学法を使う必要はなかった。細いフィラメントの原子モデルを観察し、重合に対して重要な役割を果たすと考えられてアミノ酸に変異を導入したところ、実際に重合能が低下し、GFPを融合した変異型アクチンは細胞内での分布がより散漫であった。またATP分解に間接的に関与すると予測されたアミノ酸を変異させたところ、ATP分解活性が10倍以上となり、予測が裏付けられた。また同じアミノ酸を別のアミノ酸に変化させた際は、ATP分解活性が低下した。これらの変異体アクチンのX線結晶解析をおこなったところ、対応する構造変化が観察され、生化学的実験結果をよく説明出来た。ATP分解活性の増大の原因が分解反応速度の増大であって、ヌクレオチド交換の速度の増大ではないことを、ヌクレオチド交換速度を測定し、これが分解速度よりも数倍速いとの測定により確認した。ATP分解がマグネシウムを必要とする機構も示した。
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