研究課題
特定領域研究
Qβファージの複製酵素はQβファージ自身のRNAゲノムにコードされているβサプユニット(レプリケース)の他に宿主である大腸菌由来の翻訳伸長因子であるEF-Tu、EF-Ts、リボゾーマルタンパク質S1を含む複合体である。我々は、Qβファージ由来のRNA依存性RNA合成酵素(RNA dependent RNA polymerase : RdRp)であるQβ複製酵素複合体のX線結晶構造解析、機能解析を通して、RNA合成における翻訳因子の役割、そして、RNA依存性RNA合成酵素のRNA合成の動的分子基盤を明らかにすることを目的として研究を進めている。本申請課題にて、レプリケース、EF-Tu、EF-Ts三者複合体と、レプリケース、EF-Tu、EF-Ts、S1四者複合体を複合体として大腸菌にて大量に発現、精製するスキームを試みてきた。EF-Tu、EF-Ts、S1四者複合体に関して結晶が得られたが、十分な分解能が得られる良質な結晶ではなく、また結晶化の再現性も得られなかった。そこで、レプリケース、EF-Tu、EF-Tsをアミノ酸リンカーでつないだタンパク質の精製、結晶化を試みた。この一本鎖にしたタンパク質は、通常のEF-Tu、EF-Tsの三者複合体と同様に、34ヌクレオチドのモデルRNAを鋳型として、それに相補的なRNAを合成できることを確認している。そこで、一本鎖にしたタンパク質を大量に発現し、精製するスキームを確立し、結晶化を行ったところ、PEG400を沈殿剤とした条件で良質な結晶を再現性よく、確実に得ることができた。つくばの放射光施設Photon FactolyのビームラインBL-17AでX線回折実験を行い、分解能2.8Åでデータ収集を行った。空間群はC222_1であり、格子定数はa=139.9Å、b=250.1Å、c=101.2Åであった。セレノメチオニン置換体タンパク質をもちいて結晶化を行い、得られた結晶を用いてMAD法によって3.1Åの分解能で位相の決定に成功した。現在、モデル構築、精密化を行っている段階である。今後、得られた構造から、QβレプリケースによるRNA合成の分子基盤の一端が明らかにされると期待している。
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