研究課題
特定領域研究
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、細胞外刺激を細胞内へ伝える多機能処理装置として働く。このGPCR装置は、(1)リガンド選択性素子、(2)G蛋白質(G)選択素子、(3)リガンド依存的G活性化素子、(4)リン酸化などによる機能修飾素子、さらには(5)細胞内局在化素子などを併せ持つ。しかしこれらのほとんどは未だその実体が不明である。本研究では、プロスタノイド受容体を題材として、GPCR装置に内在するG蛋白質選択素子やG活性化素子を網羅的に探索し、その分子メカニズムを化学的・構造的・細胞生物学的に解き明かすことを目的として解析を行った。以下に21年度の成果を示す。1. EP3受容体による膜ラフト局在とcAMP産生増強…EP3受容体は、多くの細胞でGiを介してcAMP産生を抑制するが、ある種の細胞ではGqと共役し細胞内Ca2+動員とCaMキナーゼを介してアデニル酸シクラーゼ活性化を増強すること、さらにこの細胞でEP3は膜ラフト画分に存在し、その作用は、caveolin-1ならびにlipid raft依存的に引き起こされることを見出した。2. 炎症惹起・免疫増強-EP2/EP4受容体…(1)EP2/EP4受容体がPI-3キナーゼ活性化を介してTh1分化を増強すること、(2)EP2/EP4受容体がE-pacを介してTh17エクスパンジョンを増強すること、さらにEP4受容体がPKAを介して樹状細胞からのIL-23産生を増強することを発見し、これらの作用が接触性皮膚炎や多発性硬化症などの炎症性疾患の発症・進展に重要な役割を果たすことを示した。
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