研究概要 |
目的:内外核膜はこれを貫く核孔とともに核信号伝達のための特殊な空間構造を形成している。これまで、外側核膜に存在するイオンチャネルを数種機能的に同定してきたが、内側核膜のイオンチャネルについては不明な点が多い。内側核膜標本の作製およびそのような標本でのイオンチャネルの同定を目的とした。 方法:膵腺細胞からの核小胞体標本(核とそれを覆う核膜:nuclear envelope:NE)を対象とした。核小胞体標本を低浸透圧クエン酸ナトリウム溶液(10mM-Na-citrate溶液)中にて、室温、3-4時間の撹拌震盪、の処理を施し、外側核膜の除去を試みた。外側核膜の有無は、BODIPY-FL-Thapsigargin染色の可否で判定した。チャネルの検出にはpatch-clamp法を用いた。 結果・考察:NE標本であり、数種のイオンチャネルがその表面(外側核膜)に存在した:1)200pS Maxi-K channel,2)80pS K-channel,3)30pS cation-channel,4)7pS Cl-channel,5)300pS IP3R-channel(type 3),6)55pS cADPR or NAADP-dependent channel。しかし、低浸透圧クエン酸ナトリウム処理後の、内側核膜と思われる標本からは顕著な背景イオンチャネルは検出されなかった。ただ、数例において、inside/out後、IP_3(10μM)を標本チャンバーに投与すると特有のチャネル活動(Na透過性)が観察された,,この結果は、内側核膜にはIP_3受容体チャネルが核質に向かって存在することが示唆された。
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