研究概要 |
本年度は(1)FRET法による細胞骨格微小管蛋白ビメンチンのリン酸化検出プローブの最適化,ならびに(2)抗体可変領域の抗原による安定化を利用した新規イメージング法の開発を目標に研究を行った。 (1)では前年度に得られた、細胞周期によりそのリン酸化が制御されるビメンチンのセリン71リン酸化認識抗体TM71発現系を用い、オープンサンドイッチ(OS)法によるリン酸化検出を試みた。VH/VL相互作用に影響を与えるH39への変異導入によりOS-ELISAの応答性(S/B比)が顕著に向上したため,この変異体VHならびにVLをTrx融合蛋白質として酸化的細胞質を持つ大腸菌で発現させ,それぞれAlexa488とRhodamineXで蛍光ラベルし混合して試験管内で蛍光スペクトルを測定した。この結果,抗原ペプチド依存的な最大18%の蛍光強度比変化が得られた。これを電気穿孔法によりU251細胞に導入し,高感度カメラを用いて蛍光顕微鏡観察したところcleavage furrowへの局在と若干のFRET比の変化が見られた。現在各種条件で追試を行っている。 (2)では,抗原結合により蛍光強度が増強する新規蛍光ラベル化抗体"Quenchbody"の開発に成功した。具体的には,無細胞タンパク質合成系を用いて抗体VHのN末端近傍に蛍光ラベルをピンポイント導入することで,複数の低分子抗原認識FvあるいはscFvにおいて共存する抗原濃度依存的に蛍光強度が最大6倍増大する現象を発見した。メカニズムは現在解析中であるが,VH/VL界面に存在する複数のTrp残基の変異で抗原非存在時の蛍光強度が増大することから,これらの残基による蛍光のクエンチが重要であり,これが抗原結合に伴うFv安定化により解消することが考えられる。FRET法に比べて応答性に優れるこの方法を,今後各種細胞内リン酸化検出系に応用していきたい。
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