研究課題
特定領域研究
我々は、生体内におけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)インヒビターp21の機能を明らかにするために、p21遺伝子プロモーターの調節下でホタルの発光酵素(ルシフェラーゼ)を発現するトランスジェニックマウス(p21-p-lucマウス)を作製し生体内におけるp21遺伝子の発現をリアルタイムにイメージングできるシステムを開発した(Ohtani et al.2007 Proc Natl Acad Sci USA)。p21-p-lucマウスに、DMBA-TPAによる皮膚化学発癌実験を施したところ、良性腫瘍であるパヒローマがDMBA塗布後7週後頃から発生すると、そのパピローマにおいては早期にp21遺伝子の発現を示す発光が認められた。我々はp16遺伝子の発現をイメージングするマウス、p16-BAC-luc (Yamakoshi et al.2009 J Cell Biol)も作製したが、このマウスに同様の皮膚化学発癌実験を施すと、パピローマが発生してもすぐには発光は認められず、DMBA塗布後20週以上経過した良性パピローマにおいてp16-遺伝子の発現を示す発光の増強が認められた。この皮膚腫瘍形成過程においてp21遺伝子とp16-遺伝子の発現時期が違っておりp21遺伝子とp16-遺伝子の役割が異なると考えられた。そこで野生型マウス、p16遺伝子、p21遺伝子それぞれのシングルノックアウトマウス、p16とp21遺伝子のダブルノックアウトマウスにおいて同様の皮膚化学発癌実験を行い、腫瘍の形成時期や数、また良性腫瘍から悪性腫瘍への転換率について比較検討した。その結果、野生型と比べてp21遺伝子ノックアウトマウスでは良性腫瘍の数は3倍程度多くなったが、悪性転換率は野生型とかわらなかった。またp16遺伝子ノックアウトマウスでは腫瘍の数はあまり変わらなかったが悪性転換率が3倍ほど上昇した。p16とp21遺伝子のダブルノックアウトマウスにおいては、腫瘍の数は多くなり、悪性転換率も高くなったことから、実験に使ったダブルノックアウトマウスの87%ものマウスで皮膚悪性腫瘍が発生した。これらのことから、p21遺伝子は良性腫瘍の発生そのものを抑制する機能があり、p16遺伝子は良性腫瘍から悪性腫瘍への転換を抑制する機能があると考えられた(Takeuchi et al.投稿中)。
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Cell Division 5
Journal of Cell Biology 186
ページ: 393-407
Cancer Science 100
ページ: 792-797