研究課題
特定領域研究
発生期大脳皮質の神経前駆細胞は、他の細胞と同様にサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の活性依存的に細胞周期を進行しているが、神経分化に伴いCDKの活性は抑制され、軟膜側への移動を開始する。この神経細胞移動は多段階であることが知られているが、大脳皮質形成における神経細胞移動の大部分は、ロコモーション様式と呼ばれる移動である。これまでに我々は、分化した神経細胞で活性を持つ特殊なCDKであるCdk5が、移動の初期段階(ロコモーション移動の前の段階)の形態変化を制御していることを報告している(Nature Cell Biol. 2006)。しかし、神経細胞移動の中核となるロコモーション移動におけるCdk5の役割は分かっていなかった。そこで本研究では、まず従来の実験系では分子的な解析が困難であったロコモーション移動様式の移動を直接的に解析するために、子宮内エレクトロポレーション法とスライス培養系を組み合わせた新たな阻害剤スクリーニング実験系を確立した(昨年度の実績報告書参照)。今年度の研究は、この実験系を用いることにより、Cdk5およびSrcファミリーキナーゼの阻害剤が、ロコモーション移動を強く阻害することを示した。さらに、SrcファミリーキナーゼのひとつであるFynは、Cdk5の活性化因子と考えられていたが、未成熟神経細胞においてSrcファミリーキナーゼの阻害剤の添加を添加すると、Cdk5の活性が一過的に上昇することが分かり、SrcファミリーキナーゼがCdk5を負に制御する可能性が示唆された。本研究によって確立されたロコモーション移動を直接解析する方法、さらに、これを用いることによって明らかとなった、GO期において細胞周期関連タンパク質が大脳皮質形成に果たす役割について、論文として報告した(J Biol Chem2010)。
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