研究課題
特定領域研究
リンパ球の全身性動態制御は獲得免疫の基盤として免疫自己の維持に不可欠である。本研究では、インテグリン接着を制御するRap1シグナルによるリンパ球の血管内皮接着と組織内移動のメカニズムに焦点をあてて、リンパ球動態の分子基盤を明らかにする。生体内の血管内皮接着や組織内移動をin vivo imagingし、そのメカニズムがどのように機能しているかin vitroで再現し明らかにする。本年度は、リンパ節内高内皮細静脈(HEV)にRap1が停止接着に必須であることを明らかにした。Rapla/RaplbをshRNAによってknockdownすると、ローリングには影響しないが、停止を阻害した。一方、タリン、RAPL, Mst1のノックダウン及びノックアウトは、ケモカインによるローリンングから停止接着は正常であったが、安定した接着が阻害され、数分以内にHEVから脱落した。これらの結果からLFA-1/ICAM-1を介する血管内皮への接着は一秒以内におこる停止接着から安定した接着ヘシグナル依存的に制御されることが初めて明らかになった。これらのシグナルがインテグリン細胞内領域、特に前年度明らかにしたbeta2/W747の領域にどのようなに作用するか今後明らかにしたい。リンパ組織内移動について、in vivo, ex vivoでリンパ球組織内移動を2光子レーザー顕微鏡で追跡する系を確立し、RAPL-/-, Mst1-/-Tリンパ球の移動速度や距離が約50%低下していることを明らかにした。インテグリン阻害によるの移動の低下は約30%であることから、RAPL/Mst1による細胞極性制御が細胞内移動に重要であることが示唆された。またリンパ節ストローマ細胞を単離し解析した結果、ストローマ細胞がin vitroで活発なナイーブリンパ球移動を誘導することから、ストローマ細胞依存的移動の重要性が明らかになった。以上の結果から、Rap1, RAPL, Mst1が生体内リンパ球動態を調節していることが示された。RAPL-/-, Mst1-/-マウスは自己免疫様疾患を発症することから、動態異常と自己寛容の破綻がどのような因果関係にあるのか、今後明らかにしたい。
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