研究概要 |
AtPME61はペクチンメチルエステラーゼ(PME)ファミリーの一つで, シロイヌナズナ花茎の基部で特異的に発現が高まるという特性を持つ。今年度の研究で, pro AtPME61 :: GUSは花茎の皮層の特定細胞列で特異的に発現すること, 欠損変異体pme61では花茎組織内でのPME活性が有意に低下すること, 花茎皮層の特定細胞壁内でペクチンのメチルエステル化度が高いこと, などを見いだした。更に興味深いことに, pme61では花茎伸長成長が促進され, 花茎細胞壁の力学的な強度が低下することも見いだした。これらの結果は, PMEが細胞壁のゆるみ制御に関わることを示し, 細胞壁のゆるみの研究に新たな視点を与えるもので, その意義は大きいと言える。 ヒメツリガネゴケには32のXTH遺伝子(PpXTH)が存在し, その中にコケに固有のサブグループが存在することを明らかにした。その中で, コケに特徴的な遺伝子構造や発現特性を示す遺伝子種についてノックアウトラインとPro ;; XTH :: GUS融合体発現ラインを作成し, 遺伝子機能とタンパク質の局在解析を進めた。その結果PpXTH32タンパク質は原糸体内に発現し, そのノックアウト体では原糸体の成長が抑制されることを見いだした。この研究により, 原糸体の細胞伸長を細胞壁関連遺伝子の機能という視点から解析できるようになった。 イネにおいて, キシログルカンが細胞壁のゆるみに関わるか否かは未だ結論の出ていない大きな問題である。この問題に答えるために, イネの茎葉部の伸長域で特異的に発現するOsXTH19の酵素反応特性を解析し, その基質がキシログルカンであることを実証した。この結果は, 細胞伸長におけるキシログルカンの役割が被子植物に普遍的であることを示す点で重要な成果である。
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