研究課題
新学術領域研究(研究課題提案型)
細胞融合は生体内において精子と卵子の受精、破骨細胞の分化、筋芽細胞による筋繊維の形成、さらにウイルスの標的細胞への侵入にいたるまで、多くの生理的・病理的な生命現象の際に起こるダイナミックなイベントである。しかしながら、細胞融合を担う分子メカニズムの詳細は未だ解明されていない。このようななか、申請者は昨年度までにsmall G proteinであるRacの活性化が破骨細胞の細胞融合に重要であることを示唆する知見を得た。本年度はRacのGEFであるFARP2の破骨細胞における役割に注目し、遺伝子改変マウスを用いた解析に加えてタイムラプス蛍光顕微鏡を用いた"時空間的"な解析を行うことにより、破骨細胞の細胞融合におけるFARP2の機能の詳細を明らかにすることを試みた。GEFドメインを欠損させたドミナントネガティブ型FARP2(ΔGEF-FARP2)をRAW24.7細胞に強制発現する細胞株は、RANKL刺激による多核破骨細胞への分化が障害されていた。しかしながらこの細胞では破骨細胞分化マーカーの発現は認められ、破骨細胞分化後期に生じる多核化が障害されていることが明らかとなった。ΔGEF-FARP2発現細胞に認められる破骨細胞多核化障害を詳細に検討した。すると、(1)細胞骨格を形成するアクチン繊維構造が変化し、破骨細胞に認められるPodosome-beltの形成が障害されていた。(2)FRET法を用いて時空間的なRacの活性化を検討し、コントロール細胞で認められたpodosome-beltに特異的なRacの活性化がΔGEF-FARP2発現細胞では認められなかった。(3)ΔGEF-FARP2発現細胞はコントロール細胞に比べてインテグリンの活性が高く、細胞外基質に対する接着活性が顕著に高い、ということが明らかになった。FARP2の破骨細胞における機能をさらに確認するため、FARP2遺伝子欠損マウスを樹立し、in vitroにて破骨細胞分化誘導実験を行った。するとFARP2欠損細胞はRANKL刺激による破骨細胞分化マーカーの発現は正常であるにもかかわらず、多核破骨細胞の形成が障害され、FARP2が破骨細胞多核化に重要な分子であることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://www.biken.osaka-u.ac.jp/lab/immunopathology/