研究課題
基盤研究(B)
先行する研究により大脳皮質において層特異的に発現する遺伝子が多数報告されているが、我々は予備的にさまざまな遺伝子の中からmSorLA、ROR-beta、ER81、Tbr1の4つの遺伝子の大脳皮質における発現が明瞭に検出した。今年度は、これらの遺伝子の発現を指標にしてreeler変異の表現型の解析を行った。長くreelerマウス大脳皮質の層構造は逆転するとされてきたが、reelerの形態異常について上記の層特異的分子マーカーの遺伝子発現を指標にして層構造を特徴とする領域を観察した結果、reeler脳はニューロン集団の凝集(コンパクション)に障害があり、その結果、各層を構成するニューロンが混在し、層の境界が不明瞭となることが判明した。同様な観察はreelerマウスの脊髄後角、蝸牛神経背側核、0i集に必要な因子であることを示唆している。reelerの大脳皮質でもROR-beta発現ニューロンは広く分散することはなかった。このことはROR-beta発現細胞の凝集にはReelinシグナル以外の分子機構も関与している可能性を示唆する。同様にreelerにおいても嗅球では層構造の乱れは軽微であり、これらの層構造形成にはReelin非依存的な分子機構が存在すると考えられる。特筆すべきは、従来より繰り返して報告されているreeler大脳皮質の逆転構造は観察されなかった。reelerの形態異常はこれまで述べられてきた様な単純な層構造の逆転ではなく、いくつかの形態形成機構の異常が混在した複雑なものであることを示唆している。
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