研究課題
基盤研究(B)
セプチン系は重合性GTP結合蛋白質が構成する普遍的な細胞骨格系であるが、アクチン系・微小管系などに紛れがちなこと、遺伝子重複、適当な阻害剤がないことなどからその全貌は謎に包まれている。セプチンの重合・脱重合機構に残された問題を解明すべく、FRAPおよび電子顕微鏡技術を駆使して時空間的解析を行い、以下の結果を得た。1)セプチンのターンオーバー率はサブユニットごとに異なる。これはヘテロポリマー内の位置や他の細胞骨格分子との会合によるものと想定される。2)平均的なセプチンサブユニットのターンオーバー率は平均的なアクチン膜骨格のそれよりも2~3倍遅い。3)セプチンをRNAiで枯渇させてもアクチンのターンオーバーには影響しないが、作用機序の異なる2種のアクチン阻害剤はいずれもセプチンのターンオーバーを著明に遅延させた。このunilateralな関係は代表者らが以前報告した、アクチンストレスファイバー上での両者の相互依存性とは全く異なる。4)以上のメカニズムを解析するため、急速凍結レプリカ免疫電子顕微鏡法を用いて細胞表層のセプチンを標識したところ、アクチン膜骨格上で一様に分布してはおらず、特に分岐部、末端部、結節部、束化部に集積する傾向が見られた。これは代表者らが以前報告したように、アクチンとセプチンは直接相互作用せず、ミオシンやアニリンなどのアクチン会合分子を介して間接的にリクルートされることと符合する。5)細胞表層のセプチンは膜蛋白質GLASTのカルボキシル末端の29アミノ酸残基と相互作用することによってターンオーバー率を低下させた。以上を総合すると、アクチン膜骨格の中で相対的に安定な構成成分であるセプチンがスカフォールドないし側方拡散バリアとして機能する際の普遍的な作用メカニズムの概要を解明できた。
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