研究課題
基盤研究(B)
舌運動が呼吸調節に重要な役割を担っていることは明らかであるが、脳幹内における呼吸性舌運動の制御メカニズムについては十分明らかにはされていない。昨年度の研究により、呼吸調節因子のひとつであるpHに感受性をもつ特殊なK+チャネル(TASKチャネル)が呼吸性舌下神経活動のリズム調節に関わっていることを明らかにした。そこで本年度は、まず、呼吸ペースメーカーニューロンが局在する脳幹領域(pre-Botzinger Complex)におけるTASKチャネルのコンダクタンス変化が呼吸性舌下神経活動へ及ぼす影響について解析を行った。研究には新生児ラット脳幹スライスを用い、舌下神経から呼吸性活動を記録した上で、微小薬液注入の手法を用いて、pre-Botzinger Complex領域のpH値を選択的に変化させた。その結果、pH値を減少させた際には、舌下神経呼吸性活動のリズム性放電頻度が有意に増加し、逆にpH値を増加させた際には、舌下神経呼吸性活動のリズム性放電頻度が有意に減少した。これらの結果から、TASKチャネルのコンダクタンス変化による呼吸性舌下神経活動のリズム調節にはpre-Botzinger Complex領域が深く関わっていることが示唆された。つぎに、これまでに蓄積された呼吸性ニューロン群のイオンチャネルデータを用いて、コンピュータ・シミュレーションの手法により、呼吸性舌運動発現に関わる神経ネットワークにおけるTASKチャネルの役割について解析を行った。その結果、呼吸ペースメーカーニューロンにおけるTASKチャネルのコンダクタンス変化が、呼吸性舌運動のリズム形成ならびにリズム頻度調節に深く関わっていることが示唆された。さらに、これまでに得られた結果を統合することにより、新たな1呼吸性舌運動発現に関わる神経ネットワークモデルを構築した。
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Journal of Dental Research 88
ページ: 1048-1053