2006年から2008年にかけて、社会人を対象とした「成城学びの森」において、思い出を作品としてまとめるプロジェクトを行い、学生・高齢者まで含めた多様な人を対象として社会的な実践を行い、そこで得られた結果の理論的な検討を進めてきた。2009年度においては、その成果をさらに幅広くするために、犬学生を対象とした「成城思い出トランプ」プロジェクトを行った。これは、大学生の「現在の思い出」を記録するプロジェクトとして、大学4年間の活動を53枚のトランプとして集大成するものであり、大学4年間の記録をまとめて1セットのトランプを実際に作成した。この過程の取り組みは、http://www.nozy.org/trump/において公開するとともに、このプロジェクトに参加した学生に対するインタビューを行い、高齢者の「過去の思い出」語りのスタイルと大学生の「現在の思い出」語りのスタイルの違いについての検討を行った。 本課題では、学術的な観点から思い出を検討するだけではなく、社会の中で実際に語られ、実践されている人々の営みとしての思い出をどのような形でまとめたらよいかを明らかにすることを目的としている。そのためには、さらに多くの一般の人々の思い出に関わる営みのデータを入手することが必要になる。そこで、2010年度以降の取り組みの場を「成城学びの森」以外にも広げるための環境整備を行った。その一つが、思い出の写真をフォトブックとして保存する取り組みを行っているあるカメラ店との協力関係の構築である。その第一歩の取り組みとして、人がどのように思い出を保存しているかに関する調査を1200人を対象として行った。現在はそのデータの分析を進め、その結果に基づき、思い出保存のための枠組の検討を行っている。
|