研究課題
基盤研究(C)
中国の集市の発展は、改革開放以後、少なくとも、1990年代半ばまでは右肩上がりで進行し、その総数では革命以前の数をはるかに凌駕し、取引高では小売販売額の過半を占めるまでに至った。しかるに、1990年代の半ば以降、注目すべき変化が現れる。すなわち1994年以降の農村集市数の減少、1998年以降の集市総数の減少、2000年以降の集市取引高の停滞、及び2000年以降の小売販売額に占めるウエイトの低下である。集市は相対的地位低下の局面に入ったと考えられる。このような地位低下が、どのような要因によってもたらされたか、またそれが都市及び農村の地域構造にどのような影響をあたえると考えられるかを検討した。公式統計の分析と、3年度にわたる4地域での現地調査から、次のような諸点が明らかになった。まず、集市数の減少は、交通上の配慮からの街路市の廃止や、「退路進庁」政策を通じての常設店舗化によって進行している。また、集市売上高の停滞、及び小売業売上高に対するそのシェアーの低下は、集市数の減少に加えて、常設店舗の増加、更には近年の都市及び農村部における大型・小型スーパーマーケットの出現・増加、それらと関連しての消費者行動の変化に因っている。さらに、多様な集市群を全体から見ると、階層分化と専業化の傾向が認められる。最上位に位置する「億元以上交易市場」にも専業化の傾向が見られ、かつ一層の規模拡大が進んでいる。たとえば、大都市の蔬菜卸売市場の現地調査からは、市場間の激しい競争と共に、機能分化や階層分化の傾向が明らかになった。なお、広義のモータリゼーション(バス交通の改善、オートバイや自家用車の普及)が、低次中心の集市の淘汰をもたらしている可能性があるが、この点については、今回の調査では、直接確認できなかった。今後の課題である。
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