研究概要 |
本研究は,Tsukuba情動系ラットの中で特に低情動系(L系)ラットの多動性に注目し,これらのラットの一般活動性や様々な学習習得過程を詳細に観察することにより,L系ラットの多動・学習障害動物モデルとしての妥当性を検討すると同時に,これらの障害発生メカニズムを明らかにすることを目的とした.その結果,L系ラットは作業記憶を必要とする8方向放射状迷路を用いた空間学習課題において明瞭な空間学習障害を示すことが明らかとなった.また,L系ラットの多動性に伴い特異な概日リズムが観察され,L系ラットの多動・学習障害モデルの妥当性が確認された.そこで,空間記憶にとって重要な海馬を中心とした形態学的検索を行った結果,海馬全体に対する吻側部背側海馬の容積比がL系ラットで有意に減少しており,特に,歯状回容積比が他のラットと比べて有意に減少していることが判明した.さらに,L系ラットの空間学習成績と歯状回容積比との間に負の相関傾向が認められた.従って,空間学習障害の背景に,背側海馬歯状回の形態学的変容が示唆された.
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