研究概要 |
申請者らが提案したプラズモンギャップ(PG)プローブは,迷光が少なく低ノイズである開口プローブの長所と,高解像力を持つ散乱(Tip)プローブの長所を併せ持っている. 平成20-21年度は主としてプローブ形状の最適設計するため,プラズモンギャップ導波路(SPGW)の伝搬定数の計算を行った.解析手法としてMethod of Lines(MoL)を利用して,計算機コードを開発した.開発したコードを利用してSPGWの様々な形状の複素伝搬定数を求め,表面プラズモン伝搬における減衰定数を詳しく求めた.その結果,軸をずらしたスラブ-スラブ構造では,減衰定数を増加することなくナノサイズ光強度分布をさらに小さく集光できることを見出した.また,プラズモンギャップ導波路を利用したプローブ先端における近接場光の性質,とくに電界ベクトルの性質を詳しく分析し,近接場光分布はプローブ先端のナノ構造に大きく依存することを見出した.この結果はプラズモンギャップ(PG)プローブの設計は慎重に実行する必要があることを示している. 平成22年度はこのプローブを解析するためのシミュレーションコードを拡張改良した.現在,ほとんどのプラズモン・ナノフォトニクス研究室では,市販FDTD法コードをシミュレーションで利用している.これに対し申請者らは,体積積分方程式+Iteration法+FFTを使った高速解法(以下VIE-FFT法)に基づくシミュレーションコードを自作開発してきた.これまでの申請者らの結果と他研究室の論文との比較により,プラズモン・ナノフォトニクスの3次元大規模シミュレーションでは,VIE-FFT法はコード作成は面倒だがFDTD法より有用かつ精密な解を与えることが分かってきた.ドイツ・ミュンスターグループとの共同研究で行った三角錐プローブの大規模シミュレーションでVIE-FFT法はFDTD法に比べ高精度のナノ光分布を求めることができた.これはVIE-FFT法では,FDTD法で不可避な完全吸収層(PML)と数値安定条件,を考慮する必要がないことが大きな要因と考えられる.そこで,さらなる大規シミュレーションに適用可能なように,ソースコードの改良開発を行った.特に単精度整数しか利用出来なかったBLASの整数倍精度化,OpenMPを利用した大規模並列化を行った.
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