研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、大地震が発生したときの原子力施設周辺における地震動、すなわち、原子力施設に対する地震外力を適切に推定することにある。具体的には、大地震のシミュレーション手法の開発、およびそれを使った未知断層推定のための逆解析手法の構築を目的としている。平成20年度は、地震波の力学モデルである弾性体および粘弾性体中における波動の解析手法の開発を行ってきた。基本方針としては、地盤のような無限領域を扱うのに有利な時間領域境界要素法を用いることとし、さらに、粘弾性波動も弾性波動と同等に解析することのできる演算子積分法を適用した、演算子積分時間領域境界要素法の開発を行ってきた。また、大規模な問題を効率的に解析するための手法として、高速多重極法を適用した高速多重極境界要素法の開発を行った。主として、2次元波動伝播問題を対象とした解析手法の開発を行い、その成果を公表してきた。平成21年度は、上の成果を3次元問題に拡張するとともに、研究開発の過程で現れた種々の問題点の解決を目的とした研究を進めてきた。(1)2次元問題において開発してきた解析手法の3次元問題への拡張適用:a)スカラー波動問題(物理的な問題としては音響問題)については成果が上がっており、その一部はすでに公表されている。b)弾性(粘弾性)波動問題についても研究は進んでおり、解析の高速化のための手法開発の段階にある。解析手法の定式化に関する部分については一部公表している。(2)演算子積分境界要素法の開発にかかわる課題:演算子積分境界要素法は、対象とする問題のLaplace変換における基本解を用いてVolterra型積分方程式を時間領域で近似して解析する方法である。時間領域での計算を進めるためには、Laplace変換パラメータを複素平面上で動かして経路積分をする必要がある。積分経路は実軸が正となる領域になければならず、そうでない場合には数値解が不安定になる。積分経路は近似パラメータに依存する。弾性問題のように、連立積分方程式を扱い、行列型の基本解を用いる場合に、適切な積分経路選択のためのパラメータの条件はあまり明らかではない。そこで、同じように演算子積分境界要素法を適用でき、しかも、連立の次元がはるかに高い群中性子拡散問題の研究を並行して行い、近似パラメータの決定法について研究を進めた。(3) 実地震への適用法の検討:解析的方法による地震のシミュレーションには、地盤構造の単純化、震源断層の単純化などがどうしても必要であり、これらのモデル化による不確定要素を含んでしまう。そこで、解析的方法の適用性を検討するために、疑似経験的Green関数法にここで開発している手法を応用した。震源断層のモデルを導入し、スカラー波動の解析結果を適用したところ、SH波成分に関しては比較的良好な結果を得ている。(4) 高速多重極法のさらなる高速化と並列化:3次元問題における高速多重極法は、きわめて複雑な計算を必要とし、その計算負荷は大きい。解析には当然並列化が必要であるが、並列化に適合した、計算が単純となる高速多重極法の導入を検討した。
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計算工学講演会論文集 14
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