研究課題
基盤研究(C)
飼育下のミナミハンドウイルカ(Tursiops aduncus) 1頭に給餌し、その後の食道胃内における消化の進行を内視鏡を用いて観察した。観察では餌の種と尾数または量を変化させて、餌の消化段階と時間経過の関係、および一定量の餌が消化されて空胃に至るまでの時間を明らかにした。また、イルカにイカの顎板を給餌し、食道胃に不消化物として滞留する顎板が吐出されるまでの時間を調べた。その結果、100gから200g程度の餌一尾は約1時間半から2時間程度で消化されること、一回の満腹量に相当する餌は12時間で完全に胃内の消化が完了すること、イカの顎板の大部分は24時間で排出されることが明らかになった。さらに餌の一部を人工消化液を用いて試験管内で消化させ、餌種による消化の進行速度の違いの検証と、イルカの胃から抽出したペプシンの活性条件をpHと温度について明らかにした。これらの結果は、イルカの食道胃における餌の消化速度を明らかにしたものである。これは、野生のイルカ類から得られる胃内容物の分析を行う際に、単位時間当たりの餌摂取量を推定する手がかりとなると期待され、自然条件下におけるイルカの餌消費量やエネルギー要求量を明らかにする上で有用と考えられる。
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