研究課題
基盤研究(C)
実験的に作製したマウス腸炎モデルの腸管炎症は、我々が作成した精製MFG-E8蛋白の投与によって有意に抑制された。そのメカニズムとして、MFG-E8のα5β3インテグリンへの結合部位であるRGDドメインに変異を加えた無機能型の蛋白では腸炎の抑制ができなかったことから、MFG-E8の抗炎症効果はα5β3インテグリンへのMFG-E8の結合に依存していることが想定された。本結果を踏まえてMFG-E8による炎症抑制メカニズムの詳細についてマクロファージを用いたin vitroの実験系で検証した。その結果、LPS刺激下で誘導される炎症惹起分子であるosteopontinと競合的にMFG-E8がα5β3インテグリンに結合することによって、osteopontinによる炎症シグナルがNF-κB依存性に抑制されることが明らかとなった。平成21年度後半からmfg-e8ノックアウトマウスの飼育を開始し、平成21年度からは本マウスを使った実験に着手した。腸管炎症におけるmfg-e8遺伝子の機能を明らかにする目的で、ノックアウトマウスにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)で腸炎を作製し、野生型マウスの腸炎と比較した。腸炎の発症とともに、ノックアウトマウスでは野生型マウスに比べて体重減少、腸管短縮、組織学的炎症、炎症性サイトカイン産生が著明であった。ノックアウトマウスの結果は、これまでにおこなってきた我々の研究成果を支持する内容であった。これまでは、腸管の急性炎症におけるMFG-E8の働きを検討してきたが、今後はヒトの炎症性腸疾患に近い慢性モデルでの実験が必要と考える。
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