配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2010年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2009年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2008年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
研究概要 |
アルドステロン(Aldo)は心血管系組織のミネラロコルチコイド受容体(MR)に直接作用し、心血管障害を惹起する機序が提唱されている。我々は今回、その現象の細胞レベルでの分子機序を解明する目的で、血管内皮細胞でMRを介して遺伝子発現が誘導される因子の網羅的解析と病態との関連の検討を行った。初代血管内皮細胞では継代に伴い急速にMRの発現低下、応答減弱が生じるため、最終的にMR遺伝子をヒト血管内皮細胞株(EAhy926)に恒常的に遺伝子導入した細胞株(MR-EAhy)を作成し、MR-EAhyが生理的血中濃度(10^<-10>~10^<-9> M)のAldoで良好なMR依存性の遺伝子転写応答を生じることを確認した。次いで、MR-EAhyにおいてAldo(10^<-9> M)刺激下で発現誘導される遺伝子群をtranscriptome解析し、発現が有意(p> 0. 05)に増加した125遺伝子中、real-time RT-PCRによる二次スクリーニングにより、1) Aldo非刺激時の基底発現レベルが高く(RT-PCRのCt値30未満)、2) Aldo刺激により1. 5倍以上の発現増加を示し、3) MR拮抗薬(スピロノラクトン10^<-6> M)にて完全に発現が抑制される、12遺伝子(FKBP5, DDIT4, CCL23, NEDD9, EPS8, ESM-1, AKAP12, ERRFI1, ANGPTL4, S1P3, IGFBP3, SNF1LK)を選定した。このうちFKBP5, CCL23, NEDD9, ESM-1, ERRFI1, ANGPTL4, IGFBP3, SNF1LKの7因子につてイムノブロットでAldoによる蛋白レベルでの発現が確認された。これら7因子のうち、Aldo誘導性高血圧モデルラットの大動脈壁において対照ラットに比しESM-1(約10倍)、SNF1LK(約3倍)、ANGPTL4(約3倍)のmRNA発現増加が認められ、いずれもスピロノラクトン投与により有意に発現の抑制が認められた。 本研究の結論として、MR遺伝子導入ヒト血管内皮細胞株を用いたトランスクリプトーム解析を起点に蛋白レベルへの翻訳が確認され、Aldo血管障害モデルで発現が増加するESM-1、SNF1LK、ANGPTL4の3遺伝子を同定した。これらの遺伝子産物のAldo誘導性血管炎における病態生理学的意義が注目される。
|