研究課題
基盤研究(C)
背景:先天代謝異常症に対する治療法として肝細胞移植が期待されている。侵襲、拒絶反応が少なく、生体部分肝移植より簡便,安全である。しかし現段階では、レシピエント肝内でのドナー肝細胞の再増殖が十分に得られていない。目的:ドナー肝細胞をレシピエント肝内にて有効に再増殖させる、臨床応用可能な手法を確立する。方法:1)高力価レンチウイルスベクターの作成平成20年度に本研究にて開発したCDCA-CrmA法にて肝細胞移植を施行したが、ドナー肝細胞の有効な再増殖を認めず、原因としてレンチウイルスベクターの力価が不十分(MOI=1)であったと考えられた。本年度は限外濾過法による濃縮を行い、MOI=10となる1×10^8/ml以上の力価を目指した。2)野生型マウスに対してCDCA-CrmA法による肝移植を施行a)ドナー肝細胞に、I-BABP promoter-EGFP-CrmA遺伝子断片をLentivirus vectorを用い遺伝子導入する。b)遺伝子導入されたドナー肝細胞を野生型レシピエントマウス(B6.129S7-Gt(ROSA)26Sor/J)の脾臓に移植する。その後、レシピエントマウスに過量のCDCAの投与を開始する。結果:1)限外濾過法による濃縮により、最高7.5×10^7/mlの力価を得た。293T細胞の培養法、トランスフェクション法、パッケージング法の様々な検討を行ったが、上記の力価を超えることはできなかった。2)上記力価のレンチウイルスベクターを用いて移植を行った。移植後1.2そして3ヵ月後に再増殖の程度を確認した。EGFP陽性X-gal陽性細胞を門脈周囲に2-3個ずつ認めたが、レシピエント肝に占めるドナー細胞の割合(再増殖率)は1-2%程度であった。まとめ:再増殖率10%を目標に掲げたが、本研究年度では達成できなかった。