研究課題
基盤研究(C)
機能不全に陥った細胞、組織、臓器を持つ患者への究極の医療の一つに移植がある。しかし、移植部に浸潤するレシピエントの免疫担当細胞が、移植片の主要組織適合性抗原(MHC:ヒト→HLA、マウス→H-2)を非自己と識別し拒絶する(移植拒絶反応)。ヒトHLAは、A、B、Cのそれぞれ約30種類、60種類および10種類からなるので、約2万人に1人しか一致しないと言われている。したがって、拒絶反応を防ぐために、レシピエントは強い副作用のある非特異的な免疫抑制剤を飲み続けており、レシピエントがその副作用による感染症で死亡することも報告されている。移植医療に於ける夢は、この生理的反応である移植拒絶反応を、オーダーメイド(ドナーのMHC特異的)に、そして、免疫抑制などの副作用なく阻害することである。そのために必要な方向性は2つで、i)MHCを認識する受容体の存在とその生理的意義を確立し、ii)MHCクラスI分子と受容体分子の相互作用を特異的に制御することである。マウスでの黄金ペアーであるC57BL/6(H-2K^bD^b)マウスとBALB/c(H-2K^dD^d)マウスでの組み合わせで、2006年、H-2D^dとH-2K^dに対する受容体〔macrophage MHC receptor 1 (MMR1)〕とMMR2をコードするcDNAsの構造と293T細胞での発現に成功し、2010年、マウスMMR2のヒトホモログをコードするcDNAの単離、293T細胞やEL-4細胞での発現とそのリガンドの同定(HLA-B62)に成功した。ヒトMMR2のリガンドは、日本人のメジャーなMHCの一つであり、我々が樹立したR12モノクローナル抗体がリガンドと受容体との結合を特異的に阻害した。さらに、最近、マウスMMR1のヒトホモログをコードするcDNAの単離、293T細胞での発現とそのリガンドの同定にも成功した。それらMHCクラスIとその受容体の生理的役割を調べるために、C57BL/6マウスとBALB/cマウスの組み合わせで、マウスでのMHCであるH-2K^dやH-2D^dを発現するC57BL/6のtransgenicマウスおよびEL-4細胞を樹立し、野生型マウスに移植して生着するか拒絶されるか調べた。その結果、K^dとD^d遺伝子は非自己遺伝子としては等価であり、K^dやD^d遺伝子の発現量には依存せず、非自己遺伝子の数に依存して約半数が拒絶されることが判明した。現在樹立中のMMR2 KOマウスで、MHCクラスIとその受容体の生理的役割を確立したい。一方、臨床的薬剤の開発のために、リガンド(HLA-B62)と受容体(MMR2)の相互作用(移植拒絶に繋がる)を制御しうるペプチド配列の同定を(株)蛋白科学研究所に依頼し、3候補と1対照、計4種類のペプチドの合成を業者に依頼し入手した。MMR2を発現するtumor transfectantsを樹立し、現在、H-2K^dペンタマーとtumor transfectantsとの結合試験およびペプチドの阻害効果を検討中である。マウスやヒトで、自分のMHCと生来持っている受容体との間に重要なルール(MHCクラスI分子にはそれぞれ特異的な受容体が存在し、自分のMHC以外に対する受容体を持っている。)が見つかったので、今後、世界人類の95%以上を占める8種類のHLA-Aや9種類のHLA-Bに対する受容体の構造を明らかにし、それぞれの阻害薬を開発すれば、オーダーメイドに、そして、免疫抑制などの副作用なく拒絶反応を制御できる。
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