配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2010年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2009年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2008年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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研究概要 |
機序の解明:仮説として「早期経口摂取→消化管蠕動運動の早期回復・促進→腸管壁の線維芽細胞に対する機械的刺激(mechanical loading)→消化管吻合部におけるコラーゲン合成促進→消化管吻合部の創傷治癒促進」という消化管吻合部創傷治癒促進の一連のメカニズムを提唱し,その機序の解明を行った.先ず,ラットを用いて術後早期経口栄養摂取モデルと術後絶飲食下静脈栄養モデルを確立し,術後早期経口栄養摂取が上部消化管(空腸)吻合部耐圧性及び吻合部hydroxyproline含有量を有意に増加させることを実証した.次いで,静脈栄養管理下で胃瘻から生理食塩水または蒸留水を投与する術後早期経口補水液モデルと術後早期飲水モデルの2 群を追加して実験を行った.その結果、術後早期経口補水液・飲水モデルでも絶飲食下の静脈栄養管理に比して術後早期栄養摂取モデルと同様に吻合部の創傷治癒が有意に促進された.すなわち,消化管吻合部の創傷治癒を促進するメカニズムには,吻合部局所に対する栄養学的な効果ではなく、栄養剤・経口補水液・水の摂取によるmechanical loading が関与している可能性を初めて明らかにした.in vitro の実験として,ラットの胃から分離・培養した線維芽細胞に対して伸展圧縮負荷細胞培養装置を用いてmechanical loadingを加えて,細胞シグナルの解析を行った.増殖系のシグナルであるERKとAKTや細胞移動に係わるSTAT3の発現が見られ,最も重要な所見としてcollagen type I・IIIのmRNAが発現することが確認され,仮説の後半部分の一端を立証することができた.また,創傷治癒に促進には血小板が大きく関与していることから,副次的に,血小板と消化管吻合の創傷治癒の関係も検討した.その結果として,PRP(Platelet-Rich Plasma)が空腸吻合部の創傷治癒を促進することならびにその効果はbimodal effectであることも初めて解明した. 臨床応用:以上の基礎実験に基づいて,非常に難易度が高いとされる胸部食道癌手術の術後においても早期経口摂取が安全に実施でき,かつ術後回復を大幅に促進し得ることを実証し,国内外の学会で発表した.特に本邦では,第64回日本消化器外科学会総会ワークショップ(2009年),第65回日本消化器外科学会総会ランチョンセミナー(2010年)において講演を行い,上部消化管吻合術後の慣習的な絶飲食期間の撤廃を提言し,早期経口摂取という新しいclinical practiceの普及に大きく貢献した.
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