配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2010年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2009年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2008年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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研究概要 |
生殖幹細胞の増殖、分化制御機構を解析する目的で、胎生13.5日齢の雄生殖巣からSSEA1陽性細胞特異的に発現する遺伝子としてDDX1遺伝子を単離した。DEAD box familyに属するDDX1は、網膜芽細胞腫細胞株から増幅している遺伝子として単離され,その後神経芽細胞腫でもN-mycと共に増幅されていることが報告された)が、生殖系での機能については不明であった。DDX1の精子形成過程での発現を調べた結果、1)精巣形成過程におけるDDX1の発現は胎生11日齢生殖巣から成獣の精巣まで維持されていた。2)7日齢精巣から分離したc-kit(-),integrin α6(+),Thy-1(+)の未分化精原細胞集団で発現していた。3)成獣の精巣切片を用いた免疫染色により精細管周辺部細胞で発現していた。1)-3)により、DDX1は生殖系幹細胞で発現している遺伝子であることが示唆された。次にDDX1の生殖系での機能を調べるために、マウス精原細胞由来GC1細胞株におけるDDX1mRNAの発現をsiRNA導入によりノックダウンした結果、cyclinD2、CD9,GDF3の生殖幹細胞で発現している遺伝子が顕著に低下した。発現調節機構を調べる為にマウスcyclinD2遺伝子の転写開始点上流ゲノムDNAを用いたルシフェラーゼアッセイ、およびゲルシフトアッセイを行った。その結果、DDX1はcyclinD2遺伝子の-351から-369領域に直接結合し、転写活性を高める働きをしていることが明らかになった。DDX1により発現制御を受けるcyclin-D2,CD9,GDF3遺伝子はいずれもヒト精巣腫瘍の70%でゲノムDNA増幅がおこる染色体12p13.3領域に局在している)。そこで、ヒト精巣腫瘍由来細胞株NEC8のDDX1発現をsiRNA導入によりノックダウンしたところ、マウスGC1細胞株と同様にcyclin-D2,CD9,GDF3遺伝子のmRNA発現が低下した。さらに、軟寒天培地中でのコロニー形成能は約5%まで低下し、ヌードマウス皮下での造腫瘍能も消失した。実際にヒト精巣腫瘍組織と正常組織での発現を比較したところ、正常組織に比べセミノーマ、ノンセミノーマにおいて強い発現が見られた。これらの実験結果は、DDX1が12p13.3領域に局在する幹細胞遺伝子群の転写活性化因子として、精巣腫瘍の誘導に必須な役割を果たしていることを強く示唆する。
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