配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2010年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2009年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2008年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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研究概要 |
口腔扁平上皮癌における上皮間葉移行:epithelial-mesenchymal transition(EMT)の関与を明らかにする目的でEMTの関連因子であるTGF-β, E-cadherin, Snailおよびvimentinについて免疫組織学的検索を行い,臨床病理学的事項との相関性について検討し,さらに頭頸部扁平上皮癌由来細胞株を用い,EMT関連因子の遺伝子発現について検索した.その結果TGF-βは57例中44例(77.2%)で発現がみられたが,E-cadherinの発現減少・消失は全ての症例でみられ,特に腫瘍浸潤部で明らかであった.一方,vimentinの陽性反応を認めたのは57例中9例(15.8%)と少数例であったが,この間葉系マーカーの発現は腫瘍浸潤部に限られ,E-cadherinの発現減少・消失部位と一致していた.Vimentin発現の制御のメカニズムについては未だ不明であるが,E-cadherinと同様にTGF-β誘導によるEMTが誘導されていることが考えられた.Snail発現は57例中36例(63.1%)で認められたが,いずれも癌細胞の細胞質に弱い反応を示したのみであり,標的因子であるE-cadherinの発現様式との間に関連性はみられなかった. 頭頸部扁平上皮癌由来細胞株をTGF-βで刺激し,real time RT-PCRにて各因子のmRNAレベルの発現を経時的に検索した結果,3種類の細胞株ともSnailの発現にはほとんど変化を認めなかったが,Ca9-22ではvimentin mRNA発現の著しい増加が,KBではE-cadherin mRNA発現の著しい減少がみられ,これらの発現動態は各細胞株によって異なっていた.口腔扁平上皮癌ではTGF-β誘導によるEMTが不完全ながらも生じており,E-cadherinの発現減弱にはSnail以外の転写抑制因子が関与することが考えられた.また、Snailの発現や活性は様々なシグナル伝達経路によって制御され,口腔扁平上皮癌におけるEMT はそれぞれ症例により異なっており,EMTとは関係なく,その進展にpodoplanin 発現が関与すると思われる例もあることが示された.
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