研究概要 |
本研究では, 近未来に起こる3次元集積化実装時代に対応した高性能マイクロプロセッサアーキテクチャ設計制約条件, 及びその制約下での最適アーキテクチャ設計方式を明らかにすることを目的としている. 平成20年度には, 3次元積層の要素技術, および3次元積層技術を用いた新たなアーキテクチャ設計に関する研究動向の調査・検討を行った. これにより, 3次元積層技術により利用可能となるチップ内のトランジスタ数は飛躍的な増加し, 3次元方向に積層される各シリコン層を結合するThrough Silicon Via(TSV)によりチップ上の配線長, および配線遅延時間の短縮が可能であることを確認した. また, 近年入出力ピンの実装技術の限界により, メモリバンド幅の低下が懸念されているベクトルプロセッサに着目し, 前述の三次元積層技術がもたらす利点を最大限に活かすことが可能な3次元積層技術を用いた大容量オンチップメモリを搭載する3次元ベクトルプロセッサを提案した. 提案した3次元ベクトルプロセッサは, プロセッサ層と複数のメモリ層から構成され, メモリ層を増加させることオンチップメモリの容量を容易に増加させることが可能であり, オフチップメモリへのアクセス数を削減することで, オフチップメモリアクセスに伴う消費電力を抑制しつつ, メモリアクセスレイテンシを効果的に隠蔽する. 評価の結果, 提案するメモリ積層型3次元ベクトルプロセッサは既存の2次元実装のベクトルプロセッサと比較して, 消費エネルギを最大14%, 実行サイクルを最大63%削減出来ることを示した.
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