研究概要 |
本研究では,旧来の科学技術可視化と情報可視化との間に横たわる無用な垣根を払拭し,統計,数学,知識表現管理・発見技術,知覚・認知科学,決定科学等の知見を取り込みながら,高度な対話的視覚インタフェースを用いた解析的推論によって,巨大で動的,時に自己矛盾を起こしているような複雑なデータから,予期されることを検出するだけでなく,予期できないことも同時に発見し,時機を得た評価を効果的に共有して行動に移すための方法論として,2004年に登場してきた新しい概念であるVisual Analytics(VA,視覚分析論)に関する集中的な研究開発を実施することを目的としてきた. 最終年度の本年度は,先行研究で開発した可視化ライフサイクル管理システムVIDELICETに,代表的なVA技法を発展的に組み込むことによってVAソフトウェアのラピッドプロトタイピングを行うために,昨年度に策定した可視化技法分類をベースに専用のオントロジーを構築し,対応する重要な可視化分析手法を2種類開発した.構築した可視化オントロジーの主要なポイントは,拡大するユーザスペクトルの拡大への対応と多次元可視化における大域性の明示的表現にある.Wehrend Matrixで視覚分析する目的をユーザに特定させる際に,旧来の基本動詞と目的語の組合せに加え,ユーザスキルの申告と可視化領域の特徴づけに関する「副詞」の指定を可能にした.一方,提案した可視化分析手法は,初心者には設計の難しい伝達関数設計を介さずに効果的なボリュームデータの可視化を実行させられるボリューム平滑法と,多様体学習理論を用いて時系列を含む多次元ボリュームの位相骨格を近似的に計算し,特徴領域の視覚抽出を可能にする手法から構成される.これらは,現段階ではオフライン的にしか動作しないが,将来的にはVIDELICETシステムに組み込んだ上で,ユーザに効果的に提供できる基本環境を整備できたと考える.
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