研究概要 |
パルスエネルギー30mJのNd:YAGレーザー2倍高調波を用いて大気中での衝撃波発生実験を行った.当初のレーザー照射系では集束レンズの焦点距離が300mmと比較的長く,レーザー集束点における照射パワー密度不足から,圧電素子で高電圧を発生するのに十分な強度の衝撃波を生成することが出来なかった.そこで,より短い焦点距離の集束レンズを用いたレーザー照射系を新たに構築し,衝撃波強度の増大を図った.一方,電子ビームおよびX線発生実験を行うために,前年度に構築した真空排気系とは別に,小型の真空容器を用いた新しい真空排気系の構築を行った.カーボンナノチューブ陰極を貼り付けたセラミック圧電素子を絶縁体フォルダに固定し,真空容器内に配置した.カーボンナノチューブ陰極に対向する陽極には,銅を用いた.銅陽極を直線導入端子の先端に取り付けることで,電極間距離を0.1mmの精度で調整した.電流導入端子を介して銅陽極をオシロスコープに接続し,X線ダイオードで発生する電子ビーム電流をモニターした.10^<-6>Torrの真空下でレーザーを圧電素子の裏面に照射し,電子ビーム電流の計測を行ったが,現時点では信号とノイズの判別が難しく,十分な強度の電子ビーム電流信号の検出には成功していない.原因としては,圧電素子で発生した高電圧が予想より低く,カーボンナノチューブの先端において電子の電界放出が十分に起きていないことが考えられる.一方,上記のX線ダイオード試験と並行して,より実用化レベルに近いサイズのX線ダイオードの試作も行った.集束レンズ,レーザー窓,圧電素子等を直径約10mm,長さ約3cmの円筒内に収めた.光ファイバーやレーザー窓でのレーザー光の損失により末端では十分な強度のレーザーが得られていないが,レーザーをパルスエネルギーのより高いものに更新することで,この問題は容易に解決出来ると考えられる.
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