研究概要 |
本研究では,中部~近畿の断層地塊山地の隆起・削剥史を,熱年代学の手法を用いて明らかにすることを試みた.研究地域として,山体の主要部が花こう岩で構成される六甲山地・木曽山脈・赤石山脈を選定した.六甲山地については,平成21年度終了までに,すべての分析と結果の公表を完了した.現在の六甲山地周辺地域では,約30Maの神戸層群堆積後から約1Maに始まる六甲変動以前には,地殻変動は不活発(削剥速度<0.1mm/yr)で,準平原状のなだらかな地形が広がっていた.その後の激しい地殻変動(六甲変動)により,現在の六甲山地と大阪湾盆地が分化したことが明らかとなった.木曽山脈については,平成20年度に試料採取を行い,平成21年度には試料の分析と年代算出を行った.山脈の稜線付近から採取された複数の試料から,2~3Maのアパタイトフィッション・トラック年代値が得られた.これは,第四紀に木曽山脈が1mm/yrに達する急速な削剥を受けた(隆起した)ことを示唆する.また同期間に,木曽山脈と西の美濃三河高原の1~1.5kmの高度差が形成され,その起伏形成に木曽山脈西縁断層帯が大きな役割を果たしていることが明らかとなった.これらの事例研究により,熱年代学的手法が,日本の山地形成史の定量的な解明に有効な手法であることが示された.赤石山脈については,平成21年度に山脈を東西に横切る測線で試料の採取を行った.これらの試料については,今後熱年代学的分析を進める予定である.
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