研究概要 |
本研究では主に大型クラゲを対象にし,近年,連続して発生している大型クラゲの異常発生に伴う,その大量の死骸が海洋生態系へ与えるインパクトを解明することを目的としている。初年度である20年度は,海底に沈降後の大型クラゲの死骸に誘引される生物を撮影するための一定間隔で撮影を行うタイム・ラプス・カメラシステムを2器作製してテストを実施してきたが,大型クラゲの大量発生はなく実海域での実験はできなかった。21年度は,本種が日本海に大量に出現する10月に北海道大学水産学部附属練習船おしょろ丸の日本海実習航海時に,隠岐諸島の南東の水深約240mの点にて,上記タイム・ラプス・システムを用いて,大型クラゲ死骸に誘引される生物の観察を行った。その結果,死骸が海底に到達してまもなく(約10分後)から,腐肉食者であるクモヒトデ,巻貝がクラゲ死骸に集まるのが観察できた。 最終年度である22年度は、当該大型クラゲの大発生が予測されたが、限定的な発生にとどまった。このような状況ではあったが、発生期の10月下旬におしょろ丸にて日本海の南西部において目視観測を実施したが、その分布は認められなかった。本研究で明らかにした水中におけるクラゲの音響散乱特性を考慮して、日本海において計量魚群探知機を用いてクラゲを探査したが、当該大型クラゲおよびクラゲに集まる他の生物との対応を認めることはできなかった。クラゲの異常発生は、今後、発生する可能性の非常に高い問題であり、本助成が終了した後も、実施する予定である。
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