研究概要 |
1.高分解能変位制御システムの構築と基板材料の検討 本研究は基板上に配置したナノ構造体の間隔を1nmの分解能で精密に制御して多体効果を含む各種相互作用による新規物性の探索を行うものである。昨年度,伸張トルクの関係から伸張駆動をピエゾ素子からDCモーターに変更してナノ構造間距離を制御可能な高分解能変位制御システムを構築したが,本年度は基板材料について種々の材料を比較検討した。その結果,伸縮性に富むシリコーン樹脂が電気的・光学的に優れた特性を有することがわかり,設計伸張率の最大値である130%まで再現性よく伸長できることがわかった。 2.シリコーン樹脂基板上へのナノ構造試料堆積技術の確立 昨年度,真空チャンバーを用いた液中試料の半導体基板上への試料の分散堆積を確認したが,本年度はシリコーン樹脂基板上への試料の分散堆積を試みた。その結果,基本的には液中試料がシリコーン基板上へ分散堆積されていることがわかったが,その堆積量が極めて少なく,物性評価に必要な堆積量を得るためには条件の最適化をはかる必要がある。また基板材料がシリコーン樹脂製であるため,有機溶媒との化学反応の可能性があるが,現在取り組んでいる溶媒に対しては高い耐性を有していることがわかった。 3.本システムによるナノ構造試料間相互作用と物性研究 上記シリコーン樹脂基板上にキャスティングにより堆積したAuナノクラスター試料を,本研究で作製した変位制御システムに取り付けて基板を伸張しながら室温における試料の発光スペクトルを測定した。その結果,基板の伸張とともに発光スペクトルの変化を観測した。これの変化は基板を伸ばすことでAuナノクラスター間距離が大きくなりエネルギー移動の確率が減少したためと考えられるが,その詳細については現在調査中である。しかし本結果は本システムが本研究の目的であるナノ構造間相互作用の精密制御に有効であることを示唆している。
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