研究概要 |
本研究では, テラヘルツ(THz)波がメンブレンなどの基材を透過する特性と, 生体高分子の有無に応じてTHz帯での吸収や屈折率が変化することを利用した生体高分子の相互作用を非標識で検出する手法を開発した。特に本手法が持っ非標識分析の特性を最大限に利用し, 粗抽出物に含まれる天然物と生体高分子の相互作用を検出するための研究を実施した。 ジゴキシンと抗体を利用した競合結合実験を行い, 従来法である蛍光標識による検出実験との比較を試みた。ジゴキシンと抗ジゴキシン抗体の結合を非標識で検出する際の抗体量の検討を行った。その結果得られた実験条件を元に, ジゴキシンやその類縁体であるジゴキシゲニン, ジギトキシゲニンを50〜0.016mMの濃度(6段階)でPVDFメンブレン上に0.2μlづつプロットし, メンブレンを基材としたアレイを作成した。これに非標識の抗ジゴキ・シン抗体を作用させる際, 1および10当量のジゴキシンを混入させ, 競合試験を実施した。その結果, 従来の検出法であるAP/CDP-Starで検出した結果を同等の検出結果を得た。このことから, テラヘルツ波による非標識分析において, 競合試験が正しく検出されており, しかも検出感度が蛍光法と同程度であることが確認された。今回開発したTHzイメージング法は, メンブレンの厚み方向での干渉を利用した新しい手法であり, メンブレン上で結合した抗体による屈折率変化が干渉波形のシフトとなって計測される。その結果, 画像による多点計測が実現できる。このような非標識分析技術は, 特定のタンパク質と相互作用する化合物の追跡方法として極めて効率的である。細胞毒性など表現型スクリーニングと組み合わせることによって, 天然物を用いたケミカルジェネティクス研究を単離作業を行いながら進めることが可能になる技術でもあり, 天然物化学の研究に効率化と新しい研究展開への機会をもたらすという点で期待できる。
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