研究概要 |
平成22年度には,平成21年に引き続き,解雇コストを考慮したモデルに基づいて,実験を行った.その際,日本の雇用市場の現状を踏まえて,実験を設計した.ひとつは賃金の格差であり,もうひとつは企業の選好の多様性である.実験では,二つの内生変数を同次決定させることが非常に難しいため,格差のある賃金を外生で与えたときに,労働者の役をする被験者がどのように行動するのか,そのことが市場の需要・供給をどのように決めるかということをみた.また,解雇や失業,転職を組み込むため2期モデルとし,転職・解雇のインセンティブを持たせるような設定を作るため,最も賃金の高い企業が,労働者の能力に対して無差別であるとして,安定的でない市場を作り出した.この点は,現実の労働市場において,人気の高い企業への申込みが先着順により数分で終了するなど,必ずしも能力を反映していないことを反映している. 実験の結果,賃金に格差があるときには,解雇コストや転職コストがあると,労働者は賃金の低い企業への就職活動をしないで,抽選で賃金の高い企業に選ばれえる可能性を取る頻度が高まり,賃金の高い企業への需要が理論的な均衡で予想されるよりも,ひっ迫することがわかった. 現状では,モデルを精緻化していくことを目的として,学会報告を続けているところである.ただし,サンプル数が足りないため,今後は実験をより少人数で行えるようにするなど,改善を続けていく.最終的には,賃金を内生化し,On-the-jobサーチモデルの検証をすることを目的としている.
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