研究概要 |
半導体2次元電子系にマイクロ波を照射することにより、低磁場領域で、磁気抵抗がゼロになるが量子ホール状態とは異なる現象が発見された.この状態は、「マイクロ波誘起ゼロ抵抗状態」と呼ばれ、一見量子ホール状態に似た現象に見えるが、ホール抵抗は量子化されないなど、量子ホール状態とは顕著な違いが見られる。2層2次元電子系においては、擬スピン自由度が加わることにより、層間に電子密度差をつけることができるようになり、電子間の相互作用を微妙に調節することが可能となり、マイクロ波誘起ゼロ抵抗状態の理解に有用と考えられる。2層2次元電子系でマイクロ波誘起ゼロ抵抗状態を観測するための分子線エピタキシー装置を用いて成長された2層系高移動度試料をデバイス化して実験を行った.ミリケルビン温度域までの測定が可能なマイクロ波を導入が出来る希釈冷凍機を用いて,試料にかける横磁場方向を変えられるようにするために、横磁場を発生できる超伝導磁石自身を回転させる機構を作った.50GHz程度までの高周波を発生できるシンセサイザ及びネットワークアナライザを準備し、希釈冷凍機内へマイクロ波を導入するために低温用同軸ケープルを設置した。ワンターンコイルを用いてマイクロ波を照射し,磁気抵抗の誘起ゼロ抵抗状態の存在を調べた.しかし期待したゼロ抵抗状態は見出すことができなかった.2層系では誘起ゼロ抵抗状態が存在しないのか,さらに実験を進めて確認する必要がある.ワンターンコイルを用いたマイクロ波照射では均一性の良い交流電磁場を加えられないことも問題なので,今後照射方法の改善を行う.アンテナの工夫をしてさらに実験を進める予定である.また,この装置を用いて輸送現象の測定を行い成果が得られた.
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