研究概要 |
本年度は,昨年度までに組み上がった実験装置に改良を施した後、光誘起原子脱離のデータを取得し解析を行った。これらの実験の過程で,ガラス基板がアルカリ金属の蒸着により改質することも明らかになった。 【光誘起脱離量と吸着量の関係】 昨年度までにガラス基板にルビジウム原子を吸着させ、その吸着量を昇温脱離法で調べ、そこに紫外光を照射し脱離を起こしてそれを検出することが一通りできるようになった。今年度前半に、これらの実験過程の一つ一つの制御性や再現性を高める改良をまず行った。その改良に基づき実験を行い,アルカリ原子の石英基板への吸着量と光誘起脱離量との関係を定性的に調べることができた。用いた光の波長は365nmの紫外光の一種類であったが,ある吸着量の付近で脱離量が最も多くなるような振る舞いが観測された。定量的な理解にはさらにデータの取得が必要である。 【ガラス基板の改質】 アルカリ金属を石英基板に蒸着して実験を繰り返しているうちに,当初とは異なる結果が得られるようになってきた。このため,アルカリ金属による石英の改質を疑い,学内外の分析装置(X線光電子分光装置:XPS)を用いて表面の解析を行った。その結果,アルカリ原子が石英ガラスの内部まで浸透していることが分かった。これはこの研究が想定しているアルカリ蒸気セル内部でも起こっていることが推測され,そこでの光誘起脱離現象を解明する上で見過ごしてはならない極めて重要な事項であると考えている。このアルカリ原子のガラス内部への拡散が光脱離に及ぼす影響についての理解は今後の課題である。
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