研究課題
挑戦的萌芽研究
平成20年度の研究で、海洋酸素同位体ステージ19の大阪湾海成粘土層から得られた100-200年の高解像度気候記録が地磁気逆転付近に約4000年間の短期間、寒冷化が起こったことを明らかにした。この寒冷化は地磁気強度が30%以下に減少した時に始まり、30%以上に回復したと同時に終了し、気候は温暖化に転じている。この現象が雲量の増加がもたらすスベンスマルク効果によるものかどうかを検証するために、まず寒冷化の振幅を見積もった。地磁気強度と宇宙線量の関係式より、同寒冷化の期間には、銀河宇宙線量が80%以上に増加し、最大120%まで増加している。宇宙線量と雲量の経験式と雲量と放射強制力の関係を用いて、気温変化を見積もると、約3℃の気温低下が起こることが分かった。次に、花粉データをモダンアナログ法に適用して年平均気温を見積もったところ、最大で3.5℃の気温低下が起こったことを明らかにした。その最大の気温低下は地磁気強度が最低値をとる時に起こっている。このように、間氷期のしかも海面のピーク付近に起こった寒冷化が、地磁気強度から見積もった気温低下とタイミングおよび振幅がほぼ一致することは、この寒冷化が宇宙線量の増加による雲量の増加がもたらすスベンスマルク効果が主な原因であり、ミランコビッチ強制力など他の要因は小さかったことを示している。本研究の成果は、地磁気強度の減少による銀河宇宙線の増加が気候に影響を及ぼした明瞭な証拠を始めて発見したものであると考える。これらの成果は国際学術誌に投稿した。大阪湾1700-mコアで見つけたマツヤマーブリュンヌ地磁気逆転が多数の小反転を伴う証拠を中国黄土高原の2か所のレス・古土壌層で検証し、上記成果の元となる古地磁気データの信頼度を強化した。
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Journal of Geophysical Research 115
Palaeogeography, Plaeoclimatology, Palaeoecology 272
ページ: 115-123