研究概要 |
本年度は2年の研究期間の2年度目にあたり,以下の研究を行った. 1.昨年度の研究結果と今年度の研究との関係 全球で平均した海面水温(SST)は地球温暖化を反映して上昇の長期トレンドを有すること,全球で平均したクロロフィル-a(Chl-a)も増大の長期トレンドを有することが分かった.そこで赤道域,中緯度域,高緯度域に分割して関係を調べたが,相関を有している海域とそうでない海域に分かれることが分かった.この結果を踏まえ,今年度は,北大西洋を対象とし,大気のテレコネクションパターン(TCP)とSST,さらにChl-aの関係を調査することとした. 2.今年度の研究の方法と結果 (1)北大西洋表層に及ぼすTCPの同定:北大西洋に及ぼすTCPを,風応力を用い,R-EOF解析等により同定した.その結果,北大西洋振動(NAO),東部大西洋(EA),北太平洋-アメリカ(PNA),熱帯-北半球(TNH)の4つを抽出した. (2)TCPとSST変動:上記で同定した4つのTCPとSST偏差の関係を調べたところ,それぞれ有意で特徴的な分布を与えていることが分かった. (3)TCP,SSTとChl-a:上記の関係からTCPがSSTの影響を及ぼし,Chl-aに変動をもたらすシナリオが期待できたが,SSTとChl-aの関係は単純ではないことが分かった.少なくとも,Chl-aの分布は,TCPで期待される分布とは一致しない. 結論として,本研究ではChl-aと雲量の間の明快な関係は見出せなかった.
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