研究概要 |
平成22年度は,中部トリアス系チャート試料からみつかった宇宙塵について,電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)による化学組成の定量分析を行った.また微化石年代から決定した堆積速度とチャート試料中のスフェルール含有量をもとに,今から2億4千万年前の地球に降下した鉄質スフェルールのフラックスを求めた 研究の結果,秩父帯の中部トリアス系チャート77試料からみつかった258個の溶融宇宙塵(スフェルール)と2個の非溶融宇宙塵を発見した.このうちスフェルールは,深海底堆積物や南極氷床から報告されているものと同様に,鉄質(I type),石質(S type),マグネタイトを含むガラス質(G type)スフェルールに分類できることが明らかになった.このうちIタイプスフェルールは,全体の94%と大部分の割合を占める.EPMAによる化学組成分析をおこなった結果,これらのスフェルールは南極氷床から報告されているスフェルールに比較できることが明らかになった,特にSタイプスフェルールと非溶融宇宙塵は,コンドライト的な組成を持ち,チャート中では宇宙塵のもとの化学組成が比較的よく保存されていることが示された.スフェルールの含有量とチャートの堆積速度からは,トリアス紀中期アニシアンにおけるIタイプスフェルールのフラックスが求められた.研究の結果,当時のIタイプスフェルールの降下量として,25±8ton/yearという値を得た.またスフェルールの含有量からは,トリアス紀中期アニシアンの最後期に一時的なスフェルール降下量の増加が起こったことが明らかになった.以上の研究の成果は,米科学誌「Geology」に投稿し,2011年2月に受理された
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