研究課題/領域番号 |
20655009
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
有機化学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸部 義人 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60127264)
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研究期間 (年度) |
2008 – 2009
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研究課題ステータス |
完了 (2009年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2009年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2008年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 分子ローター / ねじれパイ電子系 / 光学分割 / 反転障壁 / 温度可変NMR / デヒドロアヌレン |
研究概要 |
本研究は、三つのデヒドロベンゾ[14]アヌレン環により構成されるプロペラ形構造をもつねじれキラル三方形分子を分子ローターとして設計し、それらを合成し、ラセミ化の活性化障壁の調査を行うことと、固体表面上におけるSTM観測を行い、その機能の検証することを目的として行った。 まず3個のデヒドロベンゾ[14]アヌレン環が縮環したねじれパイ電子系の合成を行った。また、プロペラの羽根部分がさらに大きくなり、反転障壁が大きいと予想されるナフタレン環が縮環した分子も合成した。それらのラセミ化の活性障壁を見積もるため、キラルカラムによる光学分割を試みたが、いずれの場合もピークの分離は観測されなかった。そのため、温度可変NMRを用いた詳細な検討を行ったが、1H NMRではピークの分離が見られなかった。しかし、約-100℃という測定限界まで冷却して13C NMRを測定したところ、シグナルの広幅化が観測された。したがって、デヒドロベンゾ[14]アヌレン環の反転の活性化障壁を定量的に見積もることはできなかったが、反転障壁は予想以上に小さく、キラルなプロペラ形分子が室温付近では非常に速い速度でラセミ化していることが明らかとなった。 また、プロペラ形分子の固液界面(有機溶媒/グラファイト)におけるSTM観測を試みたが、明瞭な分子イメージを得るに至らなかった。これは吸着により反転を抑制することができないためと考えられる。結論として、デヒドロベンゾ[14]アヌレン環で構成されるプロペラ形分子の分子ローターへの応用は、現状では困難である。一方、合成過程において、デヒドロベンゾ[14]アヌレン環の渡環環化による新奇な芳香族分子の生成に関する知見が得られた。これは、新たな研究テーマの萌芽として大きな収穫である。
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