研究概要 |
d金属錯体は多くの場合発光性を示さないが、金属錯体が発光材料として注目されている今、貴金属を中心とする4d,5d金属錯体でない3d金属錯体の発光性を開拓していくことは、わが国の元素戦略の観点からも重要な意義がある。3d金属錯体の中で、近年、発光性について活発な研究が展開されている銅(I)錯体、および、クロム(III)錯体について、昨年に引き続き発光性の探求を行った。 1.シクロメタレート型クロム(III)錯体の構造と電子状態の解明.配位子場が強く、励起状態でも安定な系の構築を目指し、昨年合成した[Cr(ppy)3](Hppy=2-フェニルピリジン)の類縁体である新規錯体,[Cr(ptpy)3](Hptpy=2-(p-トリル)ピリジン)の合成に成功した。結晶構造を明らかにするとともに分光学的,電気化学的性質を調べた。これらの錯体は常温で発光性を示さず、原因となる無輻射失活を抑制するためには、より剛直な系の構築が必要であることが示唆された。 2.d^<10>系錯体における強発光性の導出と制御.昨年、ハロゲン架橋Cu(I)複核錯体から強発光性の4核クラスターが生成することを見出したので、発光特性および構造変換機構について調べた。この4核クラスターは温度により発光色が変わり、77Kでは2つの発光状態から二重発光が起こることが見出された。
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