研究概要 |
本研究は,核酸伸長反応に官能基許容性に優れた結合生成反応を利用することで,さまざまな核酸複合体の合成を可能とする合成手法の開発を目的とする.本申請課題は,超分子構造構築のための新しい人工核酸の創出という構想のなかで,最も基本となる合成手法の確立を目指した萌芽的研究という位置づけになる.萌芽研究の2年の研究期間内では,(1)合成手法の確立と(2)天然核酸に対する錯形成能力の評価までを行った.本年度は,研究初期に確立した銅(I)触媒存在下でのアジドとアセチレンの[3+2]付加環化反応(触媒的Huisgen反応)を利用した合成法の高効率化を行うとともに,核酸塩基多様化法の開発を行った.具体的には,(1)多量体連結法を用いた収束的合成法の開発,(2)トランスグリコシル化反応を利用した塩基変換法を検討し,いずれも良好な結果が得られることを見いだした.収束的合成法では,3量体と4量体との連結反応により7量体を,さらに4量体同士の連結反応によりそれぞれ対応する7量体,8量体を高効率で合成できることを見いだした.液相反応を利用することでオリゴヌクレオチドの大量供給を可能とすることができた.塩基置換法の検討では,ルイス酸活性化によりチミン塩基の入れ替え反応が可能であることを見いだし,4種の天然核酸塩基をもつ単量体を合成した.単量体の構造について詳細な解析を行い,単量体が伸長反応に適した構造をもつこと,さらには天然型単量体と同様の立体配座をもつことから二重らせん形成に適した配座をもつことを朋らかにした.
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